無菌状態で育った組織培養株(TC/メリクロン)を育てるには「順化」という一般環境に慣らす作業が必要です。
組織培養株(TC株)の順化を動画でご紹介
ナーセリーの方が実際にやっている順化方法をシロウト園芸がお伝えしています
シロウト園芸が組織培養について語りながら、自宅で順化をやってみました
組織培養株(TC株)とは?

組織培養株(TC株)とは、植物の一部(芽、茎、葉など)を無菌状態の特定の培養液で増殖させた苗のことです。
組織培養技術は、観葉植物の生産において、希少品種の普及や品質向上に大きく貢献しています。また、この技術は植物の繁殖において、農業や園芸分野で広く利用されています。
組織培養株(TC株)のメリット・デメリット
- 大量増殖: 短期間で大量の苗を生産できます。
- 無病化: 無菌環境で培養するため、病気のリスクが低減されます。
- 均一性: 親株と同一の遺伝子を持つクローンを生産できるため、品質が均一になります。
- 希少品種の増殖: 繁殖が難しい希少品種を効率的に増やすことができます。
- 順化が必要:一般環境で育てるためには『順化』が必要
組織培養株(TC株)の順化に必要な道具
順化に最低限必要なもの
- 清潔な容器((ほぼ)密閉できるもの)
- 清潔な用土(水苔、バーミキュライトなど)
順化にあったら良いもの
- 殺菌剤(キッチンハイターでもOK)
- ピンセットやハサミ
- LED育成ライト
組織培養株(TC株)の順化の手順
組織培養株(TC株)を一般的な環境で育成するには、「順化」という環境に慣れさせる作業が不可欠です。
組織培養株は、無菌の人工的な環境で生育しているため、一般的な環境にいきなり移すと、乾燥や温度変化などのストレスで枯れてしまうことがあります。順化とは、徐々に環境を変化させることで、組織培養株を一般的な環境に適応させる作業です。
順化作業は具体的には瓶から出して植え付けをして、約4週間(ほぼ)密閉環境育てます。
新芽を傷つけないように瓶を降って取り出すか、割り箸やピンセットで優しく瓶から苗を取り出します。
水(ぬるま湯)で寒天を洗い流します。ボウルに入れてバシャバシャでもシンクで弱めのシャワーを当ててもOK。寒天は100%とらなくてOK。寒い時期はぬるま湯推奨。
ナーセリーではオンリーワンフロアブルを使用していますが、ベンレート水和剤でもハイターでもOK。殺菌剤につけなくてもOK。ナーセリーでも殺菌せずに順化することがあります。
清潔な用土に植え込み。傷んだ部分は除去して植え込みます。
推奨用土:水苔
その他用土:無機質用土(パーライト)、細かめのココチップ、ピートモス、ココピートなど
非推奨:腐葉土
ビトロ瓶で出た根はほとんど機能しないので、邪魔ならカットしてOK。
鉢は2号程度推奨
用土に水をあげます。水苔の場合は、硬めに絞って水が少し出るくらいでOK。
100均の蓋付きプラカップなどに入れて密閉します。
ストロー口があればそのままでもOK(ほぼ密閉状態)ですが、テープで留めて密閉すると水やりが(ほぼ)不要になります。
20~30度程度の温度、明るい場所でなるべく動かさないようにして置いておきます。
直射日光が当たる場所は温度が上がりすぎる可能性があるので注意です。LEDライトや薄いカーテン越しの光の明るさ推奨。
水やりは基本不要ですが、乾いているようなら少し水をあげるか霧吹きで水をあげます。
数日かけてプラカップの蓋を少しずつずらして、室内の湿度に慣らします。
慣らしが終わったらカップから取り出し、乾燥しすぎに気を付けて、普通の苗と同じように育てます。
順化の注意点
- 密閉したカップ内にカビが生えた場合、アルコールスプレーを噴射する
- 密閉したカップはなるべく開けないようにするほうが良いが、水やりやアルコール噴射のために開けてもOK
- 密閉状態で4週間過ごすため、カビ防止のために肥料を含まない用土を推奨します
- 密閉状態だと湿度が100%(近く)になるため、水やりは不要です
順化後の管理
順化が終わって1~2週間経ったら、植え替えや植え替え時の施肥をしても大丈夫です。
組織培養株の小さな下葉は傷んで落ちることが多いので、あまり気にしすぎないようにしましょう。
まとめ
瓶に入った組織培養株の順化と聞くと、聞き慣れない言葉が多くて不安になるかもしれませんが、密閉以外は普通の観葉植物を育てるのと大きな違いはありません。
小さな状態から育てることで、より一層の愛着が湧くことが多いです。
希少な植物をお手頃な価格で入手できる組織培養株。
ぜひ一度、組織培養株をお迎えいただき、育ててみてください。
シロウト園芸
「シロウト園芸」は、ジョリーナーセリー、RARE PLANTS JAPANと連携し、モンステラを中心とした観葉植物の魅力や育て方を、40代の初心者が東京都心で奮闘する様子と共にお届けするYouTubeチャンネルです。植え替えなどの実践的な情報から、植物育成の楽しさを発信しています。